研究概要

我々の研究室では、実験だけに頼るのではなく、「計算化学」と「機械学習(AI)」の力を融合させて、 化学反応のしやすさを事前に予測する手法の構築に挑戦しています。これにより、料理を作る前にレシピを考えるように、 コンピューターを使って「まだ世界にない革新的な材料」をこれまでより圧倒的に早く・ピンポイントで見つけ出す、 データ駆動型の材料設計・合成の実現を目指しています。


研究テーマ

量子化学計算による反応機構解析

データ駆動型材料設計の具体的な実践に向けて、我々は高分子(ポリマー)合成後の機能化手法の一種である 「高分子反応」、中でもアミノリシス反応を対象とした研究を行っています。 高分子反応は、土台となるポリマーを合成した後に様々な性質を付加できる優れたアプローチですが、 分子構造や周囲の環境によって反応挙動が複雑に変化するため、最適な条件選定が極めて困難であるという課題を抱えています。この課題に対し、 我々はアミノリシス反応系中の化学挙動を量子化学計算によってシミュレーションし、その反応メカニズムを分子・原子レベルで 高速に解き明かすことに成功しました。本研究で構築した計算アプローチは、複雑な有機化学反応であっても、その反応性を事前に ハイスループット(高速・大量)予測・評価できることを実証したものです。 ここで得られた知見は、より複雑な材料合成システムへの機械学習・データ駆動型アプローチを展開する上での強固な基盤となっています。
Matsubara, K.; Chou, L.C.; Amii, H.; Kakuchi, R.*, Molecular Systems Design & Engineering, 2022, 7, 1263–1276
Kakuchi, R.*; Matsubara, K.; Fukasawa, K.; Amii, H.*, Macromolecules, 2021, 54(13), 6204-6213.

機械学習法による材料合成: 反応性の予測・評価

近年、カーボンニュートラル社会の実現に向け、環境負荷の低い有機材料への転換や革新的な新材料開発が急務となっています。 しかしながら、材料の中でも、とりわけ有機材料の開発においては、分子の立体障害や電子状態、溶媒効果など多数の要因に反応挙動が左右されるため、 事前にその反応性を見積もることは極めて困難です。この不確実性が、材料設計における試行錯誤と開発コストを押し上げる大きな要因となっています。 そこで我々の研究では、有機材料全般の化学反応を対象とし、計算化学並びに機械学習法を援用して、その反応性を予測する手法の構築を試みています。 具体的には、反応挙動に影響を及ぼすと考えられる解釈性の高い物理化学パラメータを量子化学計算により算出し、 それらを説明変数として機械学習モデルに組み込むことで、材料の「反応しやすさ」を定量的に評価・予測することに挑戦しています。 これにより、データ駆動型の効率的な材料設計プロセスの実現を目指しています。
詳しくは以下の論文を参考にしてください。
Matsubara, K.; Takahashi, K.*; Matsuda, T.; Ueki, Y.; Seko, N; Kakuchi, R.*, ChemPlusChem, 2024, 89, e202300480.
Matsubara, K.; Nirazuka, T.; Takahashi, K.*; Matsuda, T.; Kuroiwa, M.; Omichi, M.; Seko, N.*; Kakuchi, R.*, Mater. Today chem. 2025, 45, 102610.